日本語の副題「微笑を誘うモノたちのために」というのがとても的を射ている。
デザインの要素が、本能、行動、内省の3点に分類されるというのは、おおむね同意を得られている内容らしい。
本能:直感・感覚で心地よいモノ。
行動:目的がきちんと達成できる。使い易いモノ。
内省:そのモノを持つこと、使うことを、自分で省みて、良いと感じられるもモノ。
デザイナーがデザインするに当たって考慮するのは、基本的にはその3点だが(それだけでもきちんと対処できたら大した製品だが)、著者はそれプラス、実際にモノが受け入れられるには情動が関わってくると分析する。
情動:いいね。すてき。の後に来る、欲しい!自分のものにするぞ!という情熱のような感じ。
そこを実現することがデザインの目的だという。
面白いのは、目的の情動を導き出すためには、デザインのセオリーから外れても良い場合があるということ(出来の悪い子ほどかわいい的な話)や、人間と長期間インタラクティブに関わる必要があるモノ(ロボットなど)のデザインにおいては、そのモノ自体が情動を備えていて、人間の移り変わっていく情動に対応してゆく必要があるとか、人間の代わりに物事を処理してゆくモノにはどうしても情動を備えてもらう必要があるという、話の展開。
なるほどね、という感じである。
情動の定義が微妙な分、具体的な実例を多数挙げ、詳しく説明している。
翻訳がとても上手だと思う。
わかり易く、面白い本。